損額、受験の地方格差を受けてきた説
認めたくなかった。しかし間違いなく井の中の蛙だった。
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の○の○びよりに出てくるようなド田舎ではないにしろ、決して都会とは呼び難い地。
小中学校での成績は良かった。正直ぶっちぎりのトップだった。250点満点の試験で247点を叩き出す、一つ上の学年の1位2位を蹴落として独り漢検2級に合格するなど、その武勇伝は某仮面浪人排斥派芸人を跪かせるほどであった。当時は間違いなく最強だった。町内最強だった。
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そこでも成績は良かった。トップではないにせよ、常に上位に損額という意味不明な名を連ねていたし、3位を記録したこともあった。どうでもいいが、廊下で突然リコーダーを吹き出すなど、変態としても悪名高かった。
ここまでだった。
以後はただ堕ちていくのみだった。
受験期がやってきた。
正直受験を舐めていた。それまでは、授業をしっかり受けていれば、試験の点数は取れたからだ。
無論、大学受験はそう一筋縄ではいかないのだ。そんなことはわかっていた。でも、どうすればよいかわからなかった。
ふと周りを見渡す。みんな一心不乱に机に向かっている。何をしているのか。授業以外に何をすれば成績が上がるのか。勉強とは何なのか。
耐えきれなかった。東進衛生予備校JR奈良駅前校を飛び出して、ゲームセンターに逃げ込んだ。同級生が鉛筆を持って書を眺めている間、ボクはレイシスちゃんの乳首を持って譜面を眺めていたのだ。
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受験の地方格差が生じる要因として、一般に以下が挙げられることが多い。
①競い合う仲間が少ない。
②教育の重要性に対する周囲の認識がない。
ここでは、こうした一般論に照らし合わせながら、ボクの堕落ストーリーを分析していきたい。
①
競い合う仲間は少ないどころか、いなかったように感じる。先述のとおりボクは町内最強だった。郡内最強だったかもしれない。
それゆえ、強いやつから知識を吸収したり、勉強の方法論を仲間と一緒に考えたりする経験が、一切なかった。衛藤可奈美みたいな強すぎるが故の孤独である。全国に目を向ければそんなに強くなかったのに、だ。
こうして、ボクの中には異様な自尊心が芽生えた。これは少なくとも浪人期まで続いた。これが、ボクを堕落の道へと導いた一因かもしれない。周りの人間がこれだけできるなら、ボクはそれ以上にできるはずだ、という勘違いを引き起こした。今でも自尊心がないわけではないが、尊大な羞恥心を伴った臆病な自尊心に変わっている。
②
教育の質は高かったかといえば、肯定はしかねる。それほど熱心な教師がいたわけでもないし、教師自体ももしかしたら大した実力がないのではないかと疑うことさえあった。中学受験のちの字もなかった。普通に地元の小学校から、すぐ隣の中学校に進んだ。それが常識だと、それで充分なのだと思い込んでいた。しかし、ここからもう全国との差はついていた。
無論これは言い訳ではなく、あくまで分析である。どんなコンテクストがあったにせよ、ボクはただ実力がなかったのだ。おバカさんだったのだ。もっとも、それを受け入れるまで、多少の時間を要したが。
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納得できる成功体験のないまま日は進み、現在は大学3年生になってしまった。
過去の反省を生かし、ボクは今になっても自分なりの勉強法を模索している。
そして今度こそは、自分が築いた方法論でスキルアップし、自分の手で成功を掴み取ろうともがいている。
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大海を知ってしまった蛙がどうなったかは、誰も知らない。